2020年1月27日月曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2020年1月)


バビロニア巨大彫刻群の(あひだ)ゆくはたくましき精神に触るる如く(たの)し  五島茂『海図』

二年半ぶりの空港行方不明の女の子のポスターの新しいレイアウト  山川藍『いらっしゃい』

傘をさす一瞬ひとはうつむいて雪にあかるき街へ出でゆく  藪内亮輔『海蛇と珊瑚』


真ん中で割れたハートの絵文字 俺、そんなきれいに壊れられない  西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』
 
耳と夕焼わが内部にて相寄りつしづかに(ひれ)ふるこの空尽きず  浜田到『架橋』

耐へ切れず引き技を出す少年に俄かに迫り連打する師は  山口明子『みちのくの空』

▼▼誰カ▼▼爆弾ガ▼▼▼ケフ降ルツテ言ツテヰタ?▼▼▼BOMB!  荻原裕幸『あるまじろん』

 
パ・イ・ナ・ツ・プ・ルのルを踏まぬまま永久に欠席となる隣の女子は  吉田隼人『忘却のための試論』    




 

 


 
 

 
 
 
 

 

 

 
 

 



 
 

 















 




 


2019年10月28日月曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年10月)


かき抱くやうに大気をひきよせて風に乗りたし腋ふくよかに  小島ゆかり『六六魚』

マグカップ落ちてゆくのを見てる人、それは僕で、すでにさびしい顔をしている  千種創一『砂丘律』
 
まだたべないところを持って食べるピザ さいごは指のあとごと消える  上澄眠『苺の心臓』

何にでも搾るべき平兵衞酢(へべす)わが罪に水に魚にビールに搾る  大口玲子『ザベリオ』
 
火祭りの輪を抜けきたる青年は霊を吐きしか死顔をもてり  春日井建『未青年』

交尾せる犬の頭をかき抱きなぜおり小学一年の女児  岡部桂一郎『戸塚閑吟集』
 
便壺に蛆ふつふつとむらがるを生きのびながらかく見おろせり  坪野哲久『北の人』

路地、猫を追う君を追わない僕を、気にしなくてもいいから、猫を  𠮷田恭大『光と私語』








 

2019年9月27日金曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年9月)


水と泥きびしく分かれる池の底 鯉は浮力に耐えて眠れる  吉川宏志『青蟬』

時間っていつも燃えてる だとしても火をねじ伏せてきみの裸身は  大森静佳『カミーユ』

自転車を燃やせば秋の青空にぱーんぱーんと音がするなり  奥田亡羊『亡羊』

鹿は秋、つてみなは言ふけどあなたとは――長く連絡を取つていない  山下翔『温泉』

わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠(かわせみ)    服部真里子『遠くの敵や硝子を』
 
使われぬ(だろう)臓器の桃色を思うときふいに眠りたくなりぬ  岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』

すゐえん の あま つ をとめ が ころもで の ひま にも すめる あき の そら かな  会津八一『南京新唱』

ジョセフィヌ・バケル唄へり (てのひら)の火傷に泡を吹くオキシフル  塚本邦雄『裝飾樂句』

2019年9月22日日曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年7月)


「発車時刻を五分ほど過ぎてをりますが」車掌は語る悲恋の話  石川美南『離れ島』
 
(とり)(なずき)裂く一丁に研ぎいだす夏空ぞしんかんたるしじま   馬場あき子『飛花抄』
 
馬鹿げたる考へがぐんぐん大きくなりキャベツなどが大きくなりゆくに似る  安立スハル『この梅生ずべし』

月を見つけて月いいよねと君が言う ぼくはこっちだからじゃあまたね  永井祐『日本の中でたのしく暮らす』

次々に走り過ぎ行く自動車の運転するひとみな前を向く  奥村晃作『三齢幼虫』

煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火  井上法子『永遠でないほうの火』

ひぐらしはいつとしもなく絶えぬれば四五日は〈躁〉やがて暗澹(あんたん)  岡井隆『蒼穹の蜜』

あかねさすGoogle Earthに一切の夜なき世界を巡りて飽かず  光森祐樹『鈴を産むひばり』

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年6月)


水中より一尾の魚跳ねいでてたちまち水のおもて合はさりき  葛原妙子『葡萄木立』

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし  宇都宮敦『ピクニック』

雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁  斉藤斎藤『渡辺のわたし』

そのひとは五月生まれで「了解」を「りょ」と略したメールをくれる  土岐友浩『Bootleg

野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり  野口あや子『くぶすじの欠片』

ママンあれはぼくの鳥だねママンママンぼくの落とした砂じゃないよね  東直子『青卵』

葛城の夕日にむきて臥すごときむかしの墓はこゑ絶えてある  前川佐美雄『白木黒木』

宥されてわれは生みたし 硝子・貝・時計のやうに響きあふ子ら  水原紫苑『びあんか』

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年4月)

白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう    斎藤史『魚歌』

サキサキとセロリ嚙みいてあどけなき(なれ)を愛する理由はいらず    佐佐木幸綱『男魂歌(合同歌集)』

ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう    俵万智『サラダ記念日』

スパゲティとパンとミルクとマーガリンがプラスチックのひとつの皿に  穂村弘『水中翼船炎上中』

べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊  永井陽子『樟の木のうた』

いづこより凍れる(らい)のラムララムだむだむララムラムララムラム    岡井隆『天河庭園集』

たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか    河野裕子『森のやうに獣のやうに』

ママレモン香る朝焼け性別は柑橘類としておく いまは    小佐野彈『メタリック』

短歌の会のご案内

京町家で短歌を楽しむ会。
短歌のお話を聞いて、みんなで短歌を作ってみましょう。
初めての方、歓迎。初めてでない方も歓迎です!

https://kyomachiya-hiyori.com/event/tanka/

■□■ タイムテーブル ■□■
約30分間  短歌のお話
約30分間  簡単な短歌の作り方
約60分間  作ってみようの時間


◆短歌のお話をする人(予定)
服部 崇(短歌結社竹柏会「心の花」所属)
梅原ひろみ (同上)
ほか(各回ごとに変わります。)

=================
【 日時 】
不定期
【 参加費 】
1,000円
【 定員 】
15名 ※定員に達し次第申し込みを締め切らせていただきます。

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2020年1月)

バビロニア巨大彫刻群の 間 ( あひだ ) ゆくはたくましき精神に触るる如く 愉 ( たの ) し  五島茂『海図』 二年半ぶりの空港行方不明の女の子のポスターの新しいレイアウト   山川藍『いらっしゃい』 傘をさす一瞬ひとはうつむいて雪にあかる...