水中より一尾の魚跳ねいでてたちまち水のおもて合はさりき 葛原妙子『葡萄木立』
だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし 宇都宮敦『ピクニック』
雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁 斉藤斎藤『渡辺のわたし』
そのひとは五月生まれで「了解」を「りょ」と略したメールをくれる 土岐友浩『Bootleg』
野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり 野口あや子『くぶすじの欠片』
ママンあれはぼくの鳥だねママンママンぼくの落とした砂じゃないよね 東直子『青卵』
葛城の夕日にむきて臥すごときむかしの墓はこゑ絶えてある 前川佐美雄『白木黒木』
宥されてわれは生みたし 硝子・貝・時計のやうに響きあふ子ら 水原紫苑『びあんか』
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