2019年10月28日月曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年10月)


かき抱くやうに大気をひきよせて風に乗りたし腋ふくよかに  小島ゆかり『六六魚』

マグカップ落ちてゆくのを見てる人、それは僕で、すでにさびしい顔をしている  千種創一『砂丘律』
 
まだたべないところを持って食べるピザ さいごは指のあとごと消える  上澄眠『苺の心臓』

何にでも搾るべき平兵衞酢(へべす)わが罪に水に魚にビールに搾る  大口玲子『ザベリオ』
 
火祭りの輪を抜けきたる青年は霊を吐きしか死顔をもてり  春日井建『未青年』

交尾せる犬の頭をかき抱きなぜおり小学一年の女児  岡部桂一郎『戸塚閑吟集』
 
便壺に蛆ふつふつとむらがるを生きのびながらかく見おろせり  坪野哲久『北の人』

路地、猫を追う君を追わない僕を、気にしなくてもいいから、猫を  𠮷田恭大『光と私語』








 

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短歌のお話のなかで紹介した短歌(2020年1月)

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