2019年9月27日金曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年9月)


水と泥きびしく分かれる池の底 鯉は浮力に耐えて眠れる  吉川宏志『青蟬』

時間っていつも燃えてる だとしても火をねじ伏せてきみの裸身は  大森静佳『カミーユ』

自転車を燃やせば秋の青空にぱーんぱーんと音がするなり  奥田亡羊『亡羊』

鹿は秋、つてみなは言ふけどあなたとは――長く連絡を取つていない  山下翔『温泉』

わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠(かわせみ)    服部真里子『遠くの敵や硝子を』
 
使われぬ(だろう)臓器の桃色を思うときふいに眠りたくなりぬ  岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』

すゐえん の あま つ をとめ が ころもで の ひま にも すめる あき の そら かな  会津八一『南京新唱』

ジョセフィヌ・バケル唄へり (てのひら)の火傷に泡を吹くオキシフル  塚本邦雄『裝飾樂句』

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短歌のお話のなかで紹介した短歌(2020年1月)

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