水と泥きびしく分かれる池の底 鯉は浮力に耐えて眠れる 吉川宏志『青蟬』
時間っていつも燃えてる だとしても火をねじ伏せてきみの裸身は 大森静佳『カミーユ』
自転車を燃やせば秋の青空にぱーんぱーんと音がするなり 奥田亡羊『亡羊』
鹿は秋、つてみなは言ふけどあなたとは――長く連絡を取つていない 山下翔『温泉』
わたくしが復讐と呼ぶきらめきが通り雨くぐり抜けて翡翠 服部真里子『遠くの敵や硝子を』
使われぬ(だろう)臓器の桃色を思うときふいに眠りたくなりぬ 岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』
すゐえん の あま つ をとめ が
ころもで の ひま にも すめる あき の そら かな 会津八一『南京新唱』
ジョセフィヌ・バケル唄へり 掌の火傷に泡を吹くオキシフル 塚本邦雄『裝飾樂句』
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