2019年9月22日日曜日

短歌のお話のなかで紹介した短歌(2019年7月)


「発車時刻を五分ほど過ぎてをりますが」車掌は語る悲恋の話  石川美南『離れ島』
 
(とり)(なずき)裂く一丁に研ぎいだす夏空ぞしんかんたるしじま   馬場あき子『飛花抄』
 
馬鹿げたる考へがぐんぐん大きくなりキャベツなどが大きくなりゆくに似る  安立スハル『この梅生ずべし』

月を見つけて月いいよねと君が言う ぼくはこっちだからじゃあまたね  永井祐『日本の中でたのしく暮らす』

次々に走り過ぎ行く自動車の運転するひとみな前を向く  奥村晃作『三齢幼虫』

煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火  井上法子『永遠でないほうの火』

ひぐらしはいつとしもなく絶えぬれば四五日は〈躁〉やがて暗澹(あんたん)  岡井隆『蒼穹の蜜』

あかねさすGoogle Earthに一切の夜なき世界を巡りて飽かず  光森祐樹『鈴を産むひばり』

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短歌のお話のなかで紹介した短歌(2020年1月)

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